ルー・リード詩集「ニューヨーク・ストーリー」と雑誌「モンキー」のこと
雑誌の良いところ、それは“雑”ってところ。お目当ての記事や情報に辿り着くまでに、思いがけないコトバが目に飛び込んできたりする。こっちの思惑と合っているようでいて、ちょっとズレたりするその“雑”さが良い。本屋でふと手にした雑誌(文芸誌)モンキーを斜め読みしながら、そんなことを思った。
モンキーVol.2の「猿からの質問」というコーナーで、レイ・ブラッドベリの作品にちなんだ〈華氏451度質問〉が投げかけられている。こんなふうに。
もしあなたが、一人ひとりが一冊の書物を記憶する抵抗運動に加わるとしたら、何という書物を選びますか。また、その理由はなぜですか。
それに答えるのは作家、ミュージシャン、生物学者など14名の方々。読み始める前に、僕も少し考えてみた。サリンジャー、カポーティ、中也、手塚治虫の「火の鳥 鳳凰編」かな、それとも…。
そういえば、学生時代に同じ質問をされたことがあった。詩を学んでいた頃、先生は「ただし、詩集のみで」と言った。
そんなことを思い出しながらページをめくる。谷川俊太郎さんが、菊地成孔さんが、あの人が、この人が、思い思いの一冊を選び、言葉を添えている。そこで、作家の柴崎友香さんが選んだ本に目が留まった。
「詩集 ニューヨーク・ストーリー」ルー・リード
僕が先生への回答として用意した一冊がこれだった。他の生徒が中也や朔太郎、谷川さん、ブレイクなどを挙げる中、「僕は、ルー・リードです!」と。半分は本気で、半分は“他人と違うモノ”という半端さが、そのとき急に恥ずかしくなった。でも、先生は大真面目にこう言った。
「詩として? それとも歌詞としてですか?」
「両方です。聴くし、読みもします」と僕は答えた。その後のやりとりは覚えていない。
20年以上たった今もルー・リードとヴェルヴェット・アンダーグラウンドを聴き続け、この詩集を読み続けている。長らく絶版になっていたけれど、ようやく復刊されて良かったと思う。モンキーに綴られている柴崎友香さんの文章にもあるとおり、手に入れた人にとっては「とてもだいじな本」になるはずだから。今なら、恥ずかしくもなく、迷うこともなく、僕はこの一冊を挙げるだろう。
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MONKEY Vol.2 ◆ 猿の一ダース(柴田元幸責任編集)
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