Battles At 渋谷AX 2011.11.11.

 バトルスのライヴを見てきました。タイヨンダイが抜けてどうなることやら…と、心配されながらもリリースされた『Gloss Drop』は素晴らしかったからひと安心。でも『Gloss Drop』は人によって反応(好き!嫌い!微妙!何これ?etc.)が分かれる1枚。僕はそんなアルバムを聴き込むのが好き。“評価”が一定していないから、自分のフィーリングで捉えられる。自分と違う意見の人の声を聞くのも楽しい。『所謂、名盤を名盤として聞く』なんて、想像力が眠っちゃうだけ。僕は『Gloss Drop』が大好き。〈理由その1〉初期EP〜1stと比べて未完成っぽいのに、サウンドに迷いがない。〈理由その2〉ポップでポジティヴ。〈理由その3〉ライヴが見たくなる。さて、3人組になったバトルス、評判も良かったフジロックに続いての単独ツアー at 渋谷AX。僕が彼らのライヴを見るのは、この日が初めてです。

GLOSS DROP [解説付・ボーナストラック収録 / 国内盤] (BRC288)

GLOSS DROP [解説付・ボーナストラック収録 / 国内盤] (BRC288)

 前座は轟音ポスト・ロックをカッコよく鳴らす女の子3人組 にせんねんもんだい。ロビーまで溢れかえる観客の多さに圧倒されながらも、彼女たちの演奏が終わる3曲目前くらいに何とか会場入り。ギュウギュウの人混みの中で改めてバトルスの人気を実感しながら、僕はどこまでも流されて行く。あれよあれよと…。

 気がつくとモーゼの十戒のように道が開け、僕の前にぽっかりと一人分のスペースが!そして、眩しい光。「神様のお告げ?」と、目を開くと約2.5m(推定)もの高さにマイクスタンドがセッティングされていた(笑)。すでにライティング・チェックと音出しが始まっているステージが目の前に。いつの間にか最前列の柵にしがみつく自分がいる。神に誓おう。僕は人を押し分けてもいないし、ガンを飛ばしながら前進した覚えもない。それなのに「うっかり最前列」をキープできた。やったぜ!

 ステージに向かって左手から(ちょびヒゲが生えた)イアン・ウィリアムスのシンセ、ジョン・ステニアーのドラム・キット、デイヴ・コノプカのエフェクト類という配置。全部、左に寄せたレイアウトで、右側はマイクスタンドがぽつんと立っているだけ。ちなみにクラッシュ・シンバルも約2m(推定)の高さにセッティングされていた。シンバル以外のドラム・キットはシンプルで、低めに組まれているのがカッコいい。僕は最前列右側からステージの全貌を目撃することができた。

 3人の登場と共に会場は割れんばかりの大歓声!背面にセットされた2台のLEDモニターがカラフルに点灯して、鮮やかにライヴがスタート。ジョンのパワフルなドラミングに合わせて、イアンとデイヴはエフェクトの切り替えやループのタイミングを合わせていく。デイヴは曲間にもギターからベースに持ち替えたり、エフェクター(Line6 DL4×2台とか)をいじくったりと大忙し。そこにLEDモニターの映像が演奏とシンクロしていく。多少、息が合わないところもあったけれど、僕はそこも含めて最高だと思った!

 LEDモニターはイメージ/ライティングの演出効果はもちろん、ヴォーカル音源としても活用。『Gloss Drop』に参加したカズ・マキノ、ゲイリー・ニューマン、マティアス・アグアヨが歌う映像が目の前のライヴ演奏と同期する。U2が“ZOO TVツアー”でルー・リードと「サテライト・オブ・ラヴ」をプレイした時に初めて見た手法だけど、今はシンクロの精度もグンとアップしたね!バトルスのテクニックがあってこそ、かな。アンコールで演奏された「Sundome(寸止め)」では、山塚EYEさんの映像はなかったけれど…。

 ライヴは『Gloss Drop』からの曲を中心にテンポよく進む。にせんねんもんだいの時は爆音だったから、右手アンプ側はどうなることやらと心配していたのも杞憂だった。エフェクト、ループ、ナマ演奏をミックスしても、音の粒がクッキリ鮮やか。『Gloss Drop』のジャケットそのままのカラフルな音像だ。過度にノイジーにもならず、脆弱にもならない。サウンドは最高にタイトで素晴らしいと思った。ハイライトは「Sweetie & Shag」を演奏した時。ステージ右手から真っ赤なミニのワンピースを着た女の子が、マイクを手にひょこっと登場。あれれ、ちょっと痩せた気がするけれども、あれは確かに…ホンモノのカズ・マキノさん(Blonde Redhead)だ!わお!僕はド正面でガン見ですよ。歌い出しのタイミングが取りにくそうで、ちょっと不機嫌ぽい感じもハラハラでグー。独特のウィスパー・ヴォイスを間近で堪能いたしました。

Penny Sparkle

Penny Sparkle

 右手でキーボードを弾き、左手でギターのフレットをタップするイアン。シンバルを叩く時に中腰になるジョン、2.5mのマイクスタンドを斜めに構えて愉快なMCを披露する弟分のデイヴ。3人はもちろん「Atlas」のズンドコ節もカッコよくキメてくれた。タイヨンダイが抜けたことはとても残念だけれども、これだけのライヴができれば大丈夫。というか、僕が今年見たライヴの中でもベストかもしれない。(いい意味でも)未完成/不完全な印象を残す『Gloss Drop』は、ライヴで演奏されて初めて完成するアルバムだと思う。準備万端で制作されるはずの次のアルバム、そしてこれからのバトルスにますます期待が高まる超ポジティヴなライヴだった。僕は『Gloss Drop』がますます好きになったよ。汗だくで、笑顔で演奏する3人が目に浮かぶから。

終演後にファンと談笑、記念撮影に応じるデイヴさん。また日本に来てください!