My Best 10 Movies Of 2014

まったく! 確かに『アナ雪』にはグッときたけどね(DVD持ってる)。どいつもこいつも「レリゴー!レリゴー!」うるさいわ! 他にも素敵な映画がたくさんあった1年でした。ということで、2014年に僕が映画館で観た映画のBest10です。まずは10位〜5位。


10. 『her/世界でひとつの彼女』(監督:スパイク・ジョーンズ
ホアキン・フェニックスのしょんぼりな演技とスカーレット・ヨハンソンの声、そしてピンクを基調としたヴィジュアルに釘付けになりました。特に人口知能のサマンサ(スカヨハ)のクスクス笑いがエロくて、切なくって…。でも、途中から「新しいOS」のCMを観てるような気分になってしまったのも正直なところ。演技、映像、音楽、どれをとってもソツなく仕上がりすぎているからかも。さて。10年後、20年後にこれを観たらどんな気分になるのかな?


9. 『ガーディアンズ・オブ・ギャラクシー』(監督:ジェームズ・ガン
まったく知らなかったマーベルの宇宙ヒーローの活躍に大興奮! ミックス・テープ(カセット!)のクオリティに涙。ディズニー配給ってことで「レリゴー」よりも「ウガチャカ!」でグッとくる困った人たちも続出したとか。ジョン・C・ライリーベニチオ・デル・トロの愉快な演技も最高でした。続編に期待!


8. 『ジャージー・ボーイズ』(監督:クリント・イーストウッド
イーストウッド監督、やっぱすげえな!」と絶賛しつつも、原作はブロードウェイのミュージカルだったんだね。だからキャストの安定感は抜群だったわけか、と。そこにイーストウッド監督の演出が加われば、最高に決まってんじゃん! バンドをやってる(やったことがある)人なら、なおさらグッとくるはず。フォー・シーズンズもクールでドジなチンピラだったなんてね。エンディングまで目と耳が離せなかったよ。トミーのバカ野郎!


7. 『ネブラスカ ふたつの心をつなぐ旅』(監督:アレクサンダー・ペイン
観終わったあとは、国内での「親子のふれあい」的な宣伝に違和感。決してこの映画の内容が悪いわけではなく、もっとヘヴィなテーマだということ。逆に、そこを重苦しく描いていない点が『ネブラスカ』の素敵なところ。失望(絶望ではない)を希望にすり替えて旅に出る父親は“老いアメリカ”、世間への疎外感を持ちながら孤独な毎日を送る息子は“今のアメリカ”を象徴しているのかな。そして、それは日本に暮らす僕たちにも遠い話ではないはず。ロード・ムーヴィーの新しい傑作。しょぼさが今っぽい。


6. 『インサイド・ルーウィン・デイヴィス 名もなき男の歌』(監督:コーエン兄弟
Aメロ〜Bメロ〜Aメロ(リピート)…。同じメロディを何度も繰り返す拙いフォーク・ソングのような日常。ひとりの男の中の歌が、はからずも次世代とリンクする瞬間の静けさが切なく、熱い。60年代グリニッジ・ヴィレッジのこともデイヴ・ヴァン・ロンクのことも知らなくても大丈夫。でもね…、ボブ・ディランのことをまったく知らないと、ちょっとキツいかもしれない。ディランという主人公はそこにはいない、もうひとつの『アイム・ノット・ゼア』だと思う。


ほらね!「レリゴー」以外にも素晴らしい音楽がフィーチャーされた映画だらけでしょ。
そして、今回惜しくもBest10に入らなかった作品もたくさんあります。『ゴジラ』は頑張ったけど渡辺謙が嫌い。『キック・アスジャスティス・フォーエバー』は、設定が一気にしょぼくなりました。続編にありがち。『ゼロ・グラビティ』は宇宙の彼方へ飛んで行け。そして、最大のガッカリ賞はジム・ジャームッシュの『オンリー・ラヴァーズ・レフト・アライヴ』に決定! ストーリーのキレのなさが心配です。単純に超つまんなかった。では、5位〜1位です。よろしく!


5. 『ゴーン・ガール』(監督:デヴィッド・フィンチャー「怖いのやだな〜」と思いながら、なぜか観てしまう『セブン後遺症』。久々に「恐ろしいフィンチャーきたっ!」って思ったけど、観て正解でした。「奥様はガールかよ!」ってツッコミはさておき、ゴーンっぷりがハンパないっす。 気の弱いスプリングスティーンみたいな(笑)ベン・アフレックのおどおど感がお見事。そして、嫁の大暴走にはシアターが笑いに包まれるほど。僕もダメ男として生きる道を考えさせられました。ジワジワ、チクチク刺さるトレント・レズナーアッティカ・ロスのスコアも最高!


4. 『グランド・ブダペスト・ホテル』(監督:ウェス・アンダーソンまったく豪華なホテルだぜ! ウィレム・デフォーハーヴェイ・カイテルビル・マーレイエドワード・ノートンジュード・ロウなどなど、観る前からワクワクしちゃう名前がずらり。で、やっぱり面白かった!現在と過去が交錯する群像劇にはホテルがうってつけ。二転三転する(笑える)ミステリー仕掛けのストーリーと圧倒的な映像へのこだわり。そして変わらぬ“(不完全な)家族”というテーマにもグッときた。スキーで滑走するシーンは2014年のハイライトかも。同時代にいることを幸せに思います。


3. 『ぼくを探しに』(監督:シルヴァン・ショメこの作品は、まったくノー・マークでした。時間ができた時にフラッと入った映画館でこんなに感動するなんてね。自己啓発っぽい邦題がアレだけど、よしとします。原題は『ATTILA MARCEL(アッティラ・マルセル)』で、主人公の父親の名前。この親父がプロレスラーで、その息子がトラウマを抱えて生きるというお話。フランスにプロレスがあるのも驚きだけど、この映画のクオリティときたら! ザ・フー『TOMMY』と『アメリ』が合体したかのよう。そして、軽〜くアシッドなテイスト(笑)が入るのも素敵。セリフと配役が完璧でした。ホントに最高!


2. 『6才のボクが、大人になるまで。』(監督:リチャード・リンクレイター「えぇっと、これは僕のことですね(涙)。 以上」で、終わりにしたいくらい。オープニングのコールドプレイ「YELLOW」が流れた瞬間から涙、涙。僕の両親が離婚したのもほぼ同じ頃だし、姉がいるのもいっしょ。ってことで、極度に感情移入してしまいもう無理。引っ越したこと、誕生日の微妙な感じ、進学…、あれこれがフラッシュバックしすぎてもう無理。後日、母親にこの映画の話をしたら「あんたたちのためにやってきたのよ! 感謝して欲しいわ!」と劇中のパトリシア・アークエットと同じセリフが飛んで来て、完全にノックアウトされました。新たなトラウマ映画の誕生です。説明過多でダサい邦題だけがとても残念。原題は『Boyhood』つまり少年期。それは主人公のメイソンJr.(ボク:カタカナもダサいわ)のことだけではなくて、家族やまわりのみんなが共有した「時間」のことだと思う。舞台は家庭で、それぞれの12年という時の流れが主役なのだ。


1. 『嗤う分身』(監督:リチャード・アイオアディ)今年いちばんの衝撃! 詳しくはクッキーシーンのレヴューにも書いたけれど、ロシアのドストエフスキー原作(二重人格)、イギリス人の監督、アメリカ人のキャスト、そして…日本の音楽(しかも60年代の昭和歌謡)というカオスなハイブリッドには本当に驚かされた。自分の分身がある日突然あらわれるというストーリーをシュールでも、ホラーでも、サスペンスでもなくリアルに描いていることに引き込まれた。国籍不明の舞台設定、時間軸が歪んだ日常の風景。その完全なファンタジーの世界は、現実味を失えば失うほどリアルさが増すというパラドックス。まるで自分の頭の中のよう。『6才のボク』とは正反対に邦題のセンスも最高!


以上です!
観たかったのに観れなかったのは『フランク』(今すぐ観たい!)、 『インターステラー』(まあまあ観たい)、『トム・アット・ザ・ファーム』(トム、大丈夫か!)、『誰よりも狙われた男』(フィリップ・シーモア・ホフマン:涙)。今年もやっぱり“家族”のストーリーに泣かされっぱなしでした。最後は「レリゴー」よりも「イエロー」ってことで。

皆さん、良いお年をお迎えください。来年もクッキーシーン共々よろしくお願いします! ありがとうございました。
犬飼一郎