ミランダ・ジュライ『あなたを選んでくれるもの』


新しいメガネで最初に読み終えたのはミランダ・ジュライの『あなたを選んでくれるもの』でした。感動した! 本を読んで泣いたのは、本当に久しぶり。


のちに『The Future』として結実する映画の脚本に行き詰まった作者が「ペニーセーバー」という〝売ります/買います系〟のフリーペーパーに出品している人たちに会いに行くインタビュー集。


そのひとつひとつが今のアメリカを描き出す。それは海の向こうの話ではなくて、僕たちの生活とも重なり合う。どのエピソードも「心が暖まった」り、「ほっこり」なんてしないのがリアルだ。


半ば現実逃避のためにとったはずの行動が、息苦しいほどの現実を突きつけてくるというパラドックス。それが痛くて、どこか可笑しい。


そして、サブ・ストーリーとして描かれるのは脚本づくりの苦悩と徐々に見えてくる突破口。偶然なのか、必然なのか最後に用意されていた出会いは想像以上だった。そう、まるで人生そのもののように。


インタビュー集としても、私小説としても読める濃密なドキュメントでした。完全にスルーしてた映画『The Future』も観てみようかな。