Dark Night Of The Soul

 2010年が終わろうとしている。今年、僕にとって嬉しかったことはデンジャー・マウスとスパークルホース、そしてデヴィッド・リンチのコラボ作『Dark Night Of The Soul』がやっとリリースされたこと。このアルバムに関しては、COOKIE SCENEのディスクレビューで詳しく書かせてもらった。アルバムが完成したことはずっと前にアナウンスされていただけに、その名のとおり「闇」に葬られるなんてあんまりだと思っていた。とにかくリリースはされた。でも、その代償が大きすぎた。スパークルホースことマーク・リンカスの“自殺”という悲しい出来事こそが、「ビジネス=リリースのきっかけ」になったのかもしれないからだ。悲しい話は、これくらいにしておこうかな。

 僕はデンジャー・マウスという男がどんどん好きになっていく。彼は言わずと知れたヒップ・ホップ界から現れた最高のアイデア・マン。Jay-Zビートルズマッシュ・アップした『Grey Album』は、もはや伝説でしょう。デンジャー・マウスとスパークルホースのコラボは、2006年発表の4thアルバム『Dreamt For Light Years In The Belly Of A Mountain』から。例の『Grey Album』を耳にしたマークが、行き詰まっていたアルバム制作の打開策としてデンジャー・マウスに声をかけたらしい。結果、アルバムの冒頭を飾る名曲「Don't Take My Sunshine Away」他、数曲での共演とプロデュースを担当している。彼はその後、Cee-Loとのユニット、ナールズ・バークレイとして「Crazy」の特大ヒットやゴリラズの2nd『Demon Days』のトラック・メイキングなどでポップの天才っぷりを遺憾なく発揮し続けている。ベック『Modern Guilt』やThe Black Keys『Attack & Release』『Brothers』も要チェックということで。

 そしてデンジャー・マウスは、今年もThe Shinsのジェームス・マーサーと結成したブロークン・ベルズとして1stアルバム『Broken Bells』をリリース。決してシーンの最先端を突っ走るようなアルバムではないけれど、インディー・ロック最高峰のメロディと柔らかいのにトゲがあるビートがオーガニックに絡み合う素敵な1枚。ジャケットのアート・ワークと音像が見事に一体化している!最高でしょ。新作も出るみたい。そして、今は何とU2からオファーを受けて、新作のプロデュースをしているらしい。さらに!ホワイト・ストライプス、デッド・ウェザーのジャック・ホワイトやノラ・ジョーンズを迎えて架空のサントラ『Rome』を制作していることも伝えられている。マカロニ・ウエスタン調?なのかな。というわけで、デンジャー・マウスは絶好調。

 スパークルホース(マーク・リンカス)とデンジャー・マウス。2人の出会いと、2人が生み出した音楽は本当に素晴らしいと思う。マークがもうこの世にいないこと、自ら命を絶ってしまったことが、彼の音楽との出会いの障壁にならないで欲しい。僕は『Dark Night Of The Soul』をもっとたくさんの人に聞いてもらいたいと思っている。そしてスパークルホースが残した5枚のアルバムも。

 いずれ発表されるU2の新作。そこにデンジャー・マウスの名がプロデューサーとしてクレジットされていることを願う。きっといい仕事をしているに違いないから。そして、誰よりも先にロック/インディー・ロックとの共演を呼びかけたのはマーク・リンカスだった。2人が見つけ出した“音楽の可能性”は、これからもどんどん大きくなっていくはずだ。僕はずっとスパークルホースを聞き続けようと思う。


Vivadixiesubmarinetransmissionplot:1996
Good Morning Spider:1998
It's A Wonderful Life:2001
Dreamt For Light Years In The Belly Of A Mountain:2006
Dark Night Of The Soul:2010

myspaceのブログ(2010年12月)から転載しました。
Dark Night Of The Soulは2011年2月にようやく国内盤が発売されます。