映画『ゴッド・ヘルプ・ザ・ガール』


ベル・アンド・セバスチャンのスチュアート・マードックが脚本/音楽/監督を手がけた『ゴッド・ヘルプ・ザ・ガール』を新宿シネマカリテで観ました。めちゃくちゃ感動した!

『ゴッド・ヘルプ・ザ・ガール』は、長年スチュアートが温めていたストーリー。09年にはサウンドトラックとも、ベルセバのオリジナル作品ともひと味違う“プロジェクト”として、ラフ・トレードからアルバム(メイン・シンガーはキャサリン・アイアトン)が発表されている。

その頃から「いずれ映画化するから…!」というスチュアートの思いは僕たちにも伝わってきていたけれど、実現までに結構時間がかかった(笑)。でも、待った甲斐があったね! 昨年の欧米での公開を経て、こうして映画の中のシーンそのままに”夏休み”に観られることは素敵なことだから。


ラフトレ盤『ゴッド・ヘルプ・ザ・ガール』と前後するように、スチュアートはかなり長めのシナリオを完成させていた。そして、「さて、どうしたものやら…」と思案しているときに、アメリカ人映画プロデューサー、バリー・メンデルから1通のメールが。メンデル氏は『ゴッド・ヘルプ・ザ・ガール』のシンガーを公募していたサイトを見て、自ら映画化に助け舟を出したそうです。


彼は『シックス・センス』や『ザ・ロイヤル・テネンバウムズ』などをプロデュースした経歴を持つれっきとした映画業界人で、しかもベルセバの大ファン。けれども “シナリオ”を一読したメンデル氏は「こりゃあ、先が長いな」と。すっかり完成していた気になっていたスチュアートに容赦なくダメ出しを連発して、ストーリーを磨き上げたそう。時間がかかったのもしょうがない。その時のアドバイスは「正直なままで、小さいままで」だったとのこと(国内盤OSTブックレットより)。いい話!納得した!

『ゴッド・ヘルプ・ザ・ガール』を観て、まず最初に僕が感じたことは「正直な映画だな」ってことだった。ポップ・ミュージック、女の子と男の子、そして不安定なこころと身体。スチュアートがよく知っていて、ずっと考えていたことだけを描いている。だから、とてもリアルで、とびきりファンタジー。どっちにも転びすぎない絶妙なバランスは、ミュージカルという手法が(文字どおり)功を奏してると思う。


ストーリーのテンポやセリフの間合いも決してダレることがない。だから、僕たちはイヴ(エミリー・ブラウニング)とジェームズ(オリー・アレクサンデル)とキャシー(ハンナ・マリー)のおしゃべりやお洒落なファッション、そして歌とダンスから目を離すことができなくなる。

1つ1つのシーンがまるでポップ・ミュージックが生まれる瞬間のよう。それは魔法でも何でもなく、こんなにも切実で、楽しさと引きかえにとても儚い。病院を脱走して、仲間と出会い、自分のうたを歌い始めたイヴは言う。
「神様なんて信じない。キリストが男ってこと以外はねw」
(何度も病院に連れ戻されながらも)どんどんかわいくなって、強くなってゆく彼女にとっての“God”は音楽そのものなのかもしれない。

God Help the Girl

God Help the Girl

ゴッド・ヘルプ・ザ・ガール オリジナル・サウンドトラック

ゴッド・ヘルプ・ザ・ガール オリジナル・サウンドトラック

ちなみに「いい人≒優柔不断」なジェームズを演じたメガネ男子、若手有望俳優のオリー・アレクサンデルはYears & Yearsのリード・ヴォーカリストでもある。なんと、シングル「King」はUKチャートNo.1を獲得。さらに! 1stアルバム『Communion』までもNo.1に。映画とは真逆な超イケメンライフを謳歌してそうなオリーとYears & Yearsにも注目ってことで!

COMMUNION / DELUXE EDIT.

COMMUNION / DELUXE EDIT.