「エル・トポ」見ました。


「カルトムービーの金字塔」とか「ジョン・レノンが夢中になった」とか「ウォーホールのお墨付き」だとか伝説を挙げたらキリがない。雑誌の記事やWebの情報もほぼ同じ論調。本当にそうなの?いつかどこかで見たビデオのパッケージはちょっと怖かったよ。エログロ?アングラ?そもそもカルトムービーの定義ってナニ?あれこれ考えすぎて「大人になったら見よう」というモラトリアム。それから十数年。ついに見ましたよ、エル・トポ。結論。最高でした!

確かに目をそらしたくなる表現がある。荒唐無稽なストーリーが展開する。でも、それがどうした?問われているのは、ホドロフスキーじゃない。倫理観じゃない。見る僕たちのセンスでしょ。想像力でしょ。

見た後は誰かとおしゃべりしたくなる。「きみはどう思った?」って聞いてみたい。謎とユーモアと詩情がごちゃ混ぜの2時間。僕は砂ぼこりで肌がカサカサになった気分。とんでもない旅に付き合わされたよ。手っ取り早い感動もカタルシスもなかった。でも「今ここで、見聞きしたことなんだ」という実感がある。40年前の作品だなんて関係ない。デジタルリマスターのおかげ?それだけじゃないでしょう。

ウェスタンは映画表現が誕生した時から過去だった。宗教は未来永劫繰り返される。人は生まれ、死ぬ。ギャグと詩は紙一重だ。説明不足は時に雄弁だ。だから、この映画は古びないし、滅びない。家でしょっちょう見たいとは思わない。でも、いつも映画館で上映していて欲しい。たぶん、スクリーンを前にしたその空間は、時代も国境も関係なくなるだろう。僕は数年に一度でいいから見に行きたい。そして、その度に自分が何を感じたかを確かめたい。笑うかな?怒るかな?全人類にすすめたいとは思わない。でも、やっぱりたくさんの人に見てもらいたい。知ってもらいたいな。

ちょっとおかしな親友を誰かに紹介したら「何だあのバカ」って言われたら切ないでしょ。でも、「おもろい奴」って言われたらうれしいよね。そんな気分。魅力的だけど、困った奴と知り合いになったなーって感じ。

思ったこと。ボブ・ディランのDesolation Rawを思い出した。エピソードごとのストーリー立てはジャームッシュみたい。ウェスタンでKILL KILL KILLな感じはタランティーノ。クロサワの初期〜中期みたいに乾いた感じ/湿った感じ。ギリシャ神話的?カルトムービーの中のカルト教団とか。キューブリックみたいに構図がきれい。前半と後半のテンションの落差が微笑ましい。見たことのない昔のポルノ(洋ぴん)を想像したり。「ディアハンター」でロシアンルーレットに失敗したの誰だっけ?バカボンのパパの「これでいいのだ」という声。デヴィッド・フィンチャー「セブン」スターウォーズピクシーズのサーファー・ローザ。ジャッキー・チェンの映画。同じくブルース・リーなどなど、あれこれ。

「カルトムービー」とか「B級映画」(←最悪な呼び名だな)ってジャンルに押し込めるのはもったいない。見れるうちに、見てください。気に入った(気になった)人どうしでワイワイするの楽しいでしょう。

※2010年10月に東京で見ました。myspaceブログからの転載です。

2011年3月〜4月に大阪 高槻セレクトシネマで上映決定!
http://d.hatena.ne.jp/takatsukiselectcinema/20110216#p1