Dr.パルナサスの鏡

Dr.パルナサスの鏡」を見に行った。のんびりレイトショーで。
ヒース・レジャーの遺作で、ジョニー・デップをはじめとする3人の俳優が代役を務めたことで話題だけれど、僕はテリー・ギリアムの大ファンだから新作としても純粋に楽しみだった。
2007年のロンドンと鏡の向こうの世界を行き来するファンタジー
賢者なのに悪魔と取り引きしてしまうDr.パルナサスの酒に溺れやすい性格とその顛末が、テリー・ギリアムらしい巨大で毒味たっぷりの世界に描き出される。僕は冒頭の1シーンから、すっかり引き込まれてしまった。
悪魔のニックを演じるのはトム・ウェイツ。彼の音楽と同じく固定観念(ここでは当たり前の悪魔)を軽々と飛び越える演技がステキだ。そしてヒース・レジャーと3人の俳優が演じる謎の男トニー。悪魔と賢者、さらにトニーが加わるトライアングルの関係が物語に深みを持たせる。真の悪とは?夢と欲望とは?現実とは?
原色のイラストレーションとCGが織りなすギリアムの世界の中で人間は何度も「選択」を迫られる。その葛藤が滑稽で哀しい。
「物語を紡ぎ続けることが世界をつなぎ留めること」と若い僧だった頃のDr.パルナサスは言う。自分たちの口が塞がれても、世界のどこかで他の誰かが物語を紡いでいる。だから良くも悪くも世界は続いて行くのだ。ある時それは希望で、ある時それは残酷かもしれない。

R.I.P. ヒース・レジャー

roro xx

2010年公開時のmyspaceブログから転載しました。