ストーン・ローゼズ 日本武道館 2017.04.21.-22.

ストーン・ローゼズ 武道館2Daysに行ってきました。もともと僕は4月21日(金)の初日だけを観るつもりでいたのだけれど、その日のライヴを観たあとにどうしても次の日も観たくなって、会場で〝席の位置は保証できないけれど、割引するよ〟チケットを買ってしまいました。結果、これがナイスな判断だった。まさに「This Is The One」ってことで!

ずっと楽しみにしていたローゼズの単独公演。直前のイアン・マッカロクのドタキャン=「北朝鮮ヤバいから帰ります」騒動のあおりをくって、「ローゼズもちゃんと来るか微妙…」みたいな空気がSNSで流れ始めたり。そんな中、ライヴ数日前には「イアン・ブラウン到着のお知らせ」がこれまたツイッターで報告され始めてホッとしたのも束の間、今度は「ジョンも着いたらしいけど、まだレニとマニが来てないし…」ってね。みんな去年の〝レニ疑惑の骨折〟ドタキャン事件がだいぶトラウマになってるようで…。僕もそのひとりだけどね。


そんなふうにドキドキ、ハラハラさせられっぱなしの1週間。僕は仕事の休みを確保して、万全の態勢で挑むつもりだったのに、結局、直前のアレコレで出勤するはめに。猛ダッシュで仕事をこなしつつ、なんとか九段下に到着した時はもう開演時間の19時を少し過ぎていた。移動しながらツイッターを確認する。ちょっとくらい遅れても仕方ないな。ドタキャンしなかっただけでも良かったじゃないか。


武道館の1階スタンド席にすべり込むと、バンドは「Mersey Paradise」を演奏している最中だった。あとから知ったセットリストによると、4曲目には間に合ったことになる。ステージを確認すると、真っ白なヤンキー風ジャンパーでキメたイアンが目に入った。向かって右手にはスカジャンを着たジョン、左手にはマニ、そしてレモン印のツーバスの向こうには、ヒゲ面のレニもいる。これでホッとひと安心。22年ぶりの単独公演がようやく現実になったんだ!


そんな感慨に浸っている間もなくレニのカウントに合わせて、ジョンの軽やかなストロークが武道館いっぱいに鳴り響く。「(Song For My)Sugar Spun Sister」のイントロに、会場のみんなが歓声と手拍子でヴィヴィッドに反応する。その瞬間の光景を、僕はたぶん一生忘れないだろうな。深海のような淡いブルーのライトに照らされたアリーナの観客は、ふわふわと揺れながら音楽に身をまかせていた。ギュウギュウに押し合うわけでもなく、ステージを見つめたまま立ち尽くすわけでもない。それは『Blackpool Live』の1シーンみたいだった。憧れを抱きながら何度もDVDで観たそれは、「やっぱりイギリスだから」とか「あの時代だから」とか「いや、アシッドのおかげでしょ」とか、決して自分が体験することができないものだと思っていた。

「オーディエンスこそが主役」。そう言ったのは、ジョンだったっけ? イアンだったかな。どちらにせよ、ストーン・ローゼズのスピリットを端的に表すひとことだ。


1stアルバムの完璧さにリアルタイムでノック・アウトされながらも、ようやく観ることができた12年のフジロックでイアンのタンバリンをキャッチ(!)しながらも、その言葉が意味するものを本当に〝体験〟できたとは思えなかったことがずっと心残りだった。ぐずぐずだったソニックマニアのあとでは、「オーディエンスこそが主役」だなんて、そんなものは単なるスローガンで、ナイーヴな理想主義でしかないのかも。そう思ったことすらあった。


でも、今回の武道館は違った。アリーナのみんな、そしてスタンド席のみんなが笑顔でゆらゆら揺れながら歌い、手拍子を重ね、声援を上げていた。スネアの一発だけで会場を支配できるレニのドラム、派手さはないけれどしっかりとボトムを固めるマニのベース、ヘヴィに唸りを上げる豪快さと泣きたくなるほどの優しさが共存するジョンのギター、そして相変わらず調子っぱずれなのに我が道を行くイアンの歌声。つんのめる。ずれる。はずす。そんな彼らの演奏を補完して、名曲たちを完成させる最後のピースが〝オーディエンス〟つまり〝ここにいるみんな〟だということ。「Bye Bye Badman」から「Shoot You Down」へと続く、甘美なメロディと強靭なグルーヴの波の中で僕はようやくその意味を身をもって知り、実感することができた。会場全体からあふれ出す不思議なグルーヴを全身で感じた。


相変わらず1stアルバムを中心にしたセットリストだったけれども、いくつかの発見と驚きもあった。あの「Begging You」の狂ったようなイントロが鳴り響いた瞬間は、まさに全身鳥肌! レニのドラムがグイグイ引っ張りながらも、ジョンのワウがしっかりグルーヴィにタイトに決める。まったく古びていないどころか、最新のフロアでもしっかり響くサウンドだと思う。中盤、「Waterfall」をプレイする前にレニがあの〝レニハット〟を取り出してかぶった時は気合いがビシビシ伝わってきたよ!


そして、フジロックでもソニックマニアでもやらなかった「Elizabeth My Dear」もきっちりやるんだ〜って、しみじみしたりね。この曲の音源では最後のほうに「ピュン!」って音が入ってる。僕はそれがずっと気になってた。アコギに指がこすれる音にしてはハッキリしすぎているし…。エリザベス(女王様)を撃つサイレンサー付きの銃の音だとしたら物騒だな、とかね。で、今回のライヴではなんと! その〝音〟までがしっかり再現されていた。しかもイアンの声で(笑)。最後のフレーズ〝It’s Curtains For You, Elizabeth My Dear〟のあとで…「ピュン!」って、イアンが言ってた。つまり、あの音は録音上のノイズではなくて意図的に残したものだということ。やっぱりサイレンサーなのかな?


2日間とも完璧にみんなの大合唱がはまった(最高)「Made Of Stone」、2日間とも完璧にイアンが音程を外した(笑)「She Bangs The Drums」というローゼズしかありえない〝完璧〟な流れからのラスト、「This Is The One」と「I Am The Resurrection」では、よりいっそう大きく鳴り響く手拍子と歓声と大合唱が本当に感動的だった!

「オーディエンスが主役」。時代が変わっても、ここ日本でも、その言葉の本質を音楽で示してくれたストーン・ローゼズ。次はニュー・アルバムでもそれを証明して欲しいな。


…こうして、僕は2日目のチケットを買いに走ったワケでごさいます。えっと、次の日もまったく同じセトリでした。ブルース・リー、モハメッド・アリのモーションを完全に昇華して、もはやドリフかパタリロにしか見えないイアンのダンスも同じ…(笑)。つまり最高だったってこと。開演前にSEでフラワード・アップ「Weekender」やカメレオンズ「Swamp Thing」が流れていたんで、もう最初っから最後までめちゃくちゃ楽しかったです。 以上!


〈SETLIST 2017.04.21/22〉
1. I Wanna Be Adored
2. Elephant Stone
3. Sally Cinnamon
4. Mersey Paradise
5. (Song for My) Sugar Spun Sister
6. Bye Bye Badman
7. Shoot You Down
8. Begging You
9. Waterfall
10. Don't Stop
11. Elizabeth My Dear
12. Fools Gold
13. All for One
14. Love Spreads
15. Made of Stone
16. She Bangs the Drums
17. Breaking Into Heaven
18. This Is the One
19. I Am the Resurrection


〈おまけ〉
これがフラワード・アップの「Weekender」だ! 大好きなバンドだったよ。