『いまモリッシーを聴くということ』そして、2017年5月22日。

『いまモリッシーを聴くということ』をいま読むということ(笑)。The Smithsのアルバムがリリースされた80年代からソロ最新作を取り巻く現在まで、UKと世界情勢を背景にひもとかれるモリッシーのリリック。ワーキング・クラスの眼差しを失うことのない政治観、セクシャリティ、スミスの元メンバーとの確執、そして僕たち日本人がときおり見落としそうになる彼独特のユーモア。そんな〝モリッシーらしさ〟がイギリス暮らしの長い著者の言葉とひとつになって、音楽のように胸に届く。めちゃくちゃおもしろい!

いまモリッシーを聴くということ (ele-king books)

いまモリッシーを聴くということ (ele-king books)

僕はリアルタイムで聴きまくってた『Viva Hate』から読み始めた。そして、やっぱりジャケもイマイチな『Maladjusted』で切なくなったり…。クラッシュに『Cut The Crap』があるように、モリッシーにもあのアルバムがあるのだね。山あり谷あり。

Viva Hate: 2012 Remaster

Viva Hate: 2012 Remaster

で、『Strangeways, Here We Come』をひっぱり出して聴いてみたり。スミスとモリッシーがますます好きになれる一冊だと思います!表紙(キレイなモリッシーw)もステキ。

強いていえばひとつだけ。『The World Won’t Listen』も取り上げて欲しかったな。「Panic」や「ASK」、そして「Shoplifters Of The World Unite」という当時のスミスをさらに上に引き上げたシングルが収録されているこのコンピ盤もとても重要だと思うから。


そして追記。
すでに報道されているとおり、5月22日にアリアナ・グランデマンチェスター公演で(後日ISISが犯行声明を出した)自爆テロが起きた。この事件については世界中の人々、ミュージシャン、政府などから様々な意見や思いが伝えられているが、モリッシーも翌日に公式Facebookを通じてコメントを発表した。メディアや政府、そして僕たちでさえもが〝犯人探し〟や〝人道的にまっとう(だと思いがち)な意見〟に流されそうな中でも、〝People=私たち、一般人〟という言葉を使いながらイギリスの政治家や女王へ意見を表明している。めちゃくちゃ怒っている。5月22日はモリッシーの58歳の誕生日だった。


以下、モリッシーの公式Facebookからの翻訳です。

僕の誕生日をマンチェスターで祝ってもらっている時に、マンチェスター・アリーナでの爆発のニュースを聞いた。 怒りが刻みつけられた思いだ。これを止める理由なんてあるのか?


テリーザ・メイ(英国首相)はこんな事件にも「私たちは傷つけられない」というが、彼女自身の生活は防弾バブルに守られたものだ。そして彼女は明らかに、今日マンチェスターで犠牲になった若者たちの身元特定を急ぐ必要もないようだ。それに彼女が言った「私たちは傷つけられない」という言葉の意味は、その悲劇では「彼女自身と政府の移民政策が傷つけられることはない」ということだ。マンチェスターの若者たちはとっくにぶっ壊れているよ。ともかくありがとう、テリーザ。サディク・カーン(ロンドン市長)は「ロンドンはマンチェスターと共にある」と言っているが、彼はISを非難すらしていない。その爆弾事件について声明を発表しているのにも関わらずだ。女王は「力強いお言葉」でこの事件を非難したと馬鹿げた賞賛を博しておられますが、今日のバッキンガム宮殿での園遊会をキャンセルすることもないようで。このことについては、イギリスの報道の自由において批判すら認められていない。マンチェスター市長のアンディ・バーナムは「この攻撃は〝過激派〟によるものだ」と言っているが、何が過激なんだ? 過激なウサギちゃんか?


現代のイギリスでは、プライベートな発言をオフィシャルにすることに誰もが尻込みしているようだ。政治家たちは私たちに「テロリストを恐れることはない」と言うが、政治家たちは決して犠牲者にはならない。攻撃にさらされている場所から防御されている場合は、〝恐れずにいる〟ことも容易いだろう。我々一般人にはそんな防御などない。

モリッシー
2017年5月23日