ブエナ・ビスタ・ソシアル・クラブ★アディオス


ブエナ・ビスタ・ソシアル・クラブ★アディオス』を観た! BVSCとしての初ライヴ前のリハで「それはオレのGじゃねぇ、お前が合わせろ!」と一歩もゆずらないコンパイ・セグンド爺の一点張りにみんな大爆笑! けれども、そのタフさが実はキューバの歴史に翻弄されてきた彼をはじめとするミュージシャンたちのスピリットそのものだと気づかされて胸が熱くなる。


そして女性ヴォーカリスト、オマーラは「こんな苦悩の歌をどうしてみんな楽しめるの?」と問いかける。キューバのソンは、ブルースやレゲエと同じように困難な毎日を生き抜くために生まれた音楽だからだ。陽気なリズム、楽しげなハーモニーはまず自分たちのためにあったのだということ。アメリカとの政治的な胡散臭さの中でも、〝音楽の力〟だけで世界に受け入れられたことを素直によろこび、受け入れる懐の深さが何よりも感動的。


日常を生きるということ、歳をとるということ、それでも好きなことを続けるということ。その一方では続けられない現実もあるということ…自分にたぐり寄せてみれば、BVSCが残してくれた音楽は今まで以上の深みを持って響くのです。

The Flaming Lips 「This Here Giraffe」和訳

This Here Giraffe
小鳥が彼の頭から飛び立つのを見た
彼はいちいち見上げたりしなかったけど
こちらのキリンさんは
文句を言う気はまったくなくて
特に気にもしていない様子
きみが耳にするのは
自分の思い
きみに聞こえるのは
きみが考えてること


こちらのキリンさん、笑ってた


危険をかえりみない男がいた
双眼鏡はぶら下げたまま
右脳に伝えることができなかったのは
左脳がすべての興味を失った瞬間だった
きみは自分が縮んでいるのを
感じている
自分が縮んでいるような気がしている


こちらのキリンさん、笑ってる
キリンさんが笑ってる
そしてきみは自分の声を聞く
自分自身に耳をかたむける

I saw this bird fly off his head
Without him ever looking up
This here giraffe was never caught complaining
He wouldn't take skin off yer back.
And ya hear yourself
Thinking
And ya hear yourself
Thinking


This here giraffe, laughed


I saw this man stick out his neck
With his binoculars intact
He couldn't tell the right side of his brain
Had just lost all interest in his left,
And ya feel yourself shrinking
And ya feel yourself shrinking


This here giraffe, laughed
This here giraffe, laughed
And ya hear yourself
And ya hear yourself

映画『おクジラさま』を観て。

僕の祖父と祖母が住んでいた和歌山県那智勝浦。そして、日本と世界の「捕鯨問題」として何かと槍玉にあげられるのがその隣町、太地町だ。僕にとっては子供の頃のたくさんの楽しい思い出がある場所。太地の「くじらの博物館」には何度も遊びに行った。


09年に公開されたドキュメンタリー映画ザ・コーヴ』は見ていない。そのヒステリックな表現に煽られた報道と論争にうんざりしていた。それでも揺らがないのは「僕はどう転んでも100%太地町の側に付く」という思い。けれど、その思いもまたヒステリックな怒りになるかもしれない、僕は自分自身に対してそう思っていた(今もそう思っている)。


だからTwitterやFBで意見することもなく、めったに友だちともその話をしない。そもそも誰も「捕鯨問題」なんかに興味ないでしょ? 僕はただ故郷とも言える小さな太地町がこのSNS時代に情報とやらでリンチされているのを見ていられないだけだ。けれども、成すすべもないという半端なところにいるという自覚もある。


『おクジラさま』を観た。てっとり早い答えなどない。それはわかっている。そして、やはり解決策の糸口さえ見えないことがハッキリする。観終わったあとのこの「モヤモヤ感」はなんだろう? 太地町を知らない、捕鯨問題は何となく知っている、そんな人が観たらどう思うのかな?


一般論として「捕鯨は世界的な問題」「人道的な問題」だという。だとしたら日本の政府はどう対応しているの? 各国の捕鯨の実態を知らしめる数値的なデータは? この映画には、そんな大局的な裏づけは一切ない。啓蒙ではないのだろう。


映し出されるのは、太地の漁師さんたちの日常、その町に溶け込もうとする外国人ジャーナリスト、対話を求める右翼ふうの活動家、そして監視を続けるシーシェパードのスタッフたち。そして、そこには「議論」はないけれども、少しだけ人間同士らしい「会話」が生まれていることに気づかされる。太地町が世界を相手に議論することは、これから先も厳しいだろう。それでも小さな会話は途切れることもないはず。それは確かにかすかな希望だ。でもそれだけでは…というのが、僕の「モヤモヤ感」につながっているのかもしれない。


エンディングロールでチラッと映るシーシェパードのスコットの姿が静かに衝撃的だった。15年に団体から脱退した彼は、いま家庭的なパパになっている! で、もう太地には来ないワケで。「関係ない」いま、彼は何を思うのだろう?


小さな町で出会い、語り合えばお互いを知る。仲良くなれるかもしれない。人はそんな可能性を秘めている生き物だと思う。それぞれがどんな事情を抱えていたとしても。でも、その事情とやらがイデオロギーに置き換えられたときに厄介なことになるね。「分かり合える」という理想論よりも、「分かり合いたい」という思い。そこが始まりなんだろう。


捕鯨問題」と太地町へ目線を向ける、という意味では多くの人に観てもらいたいと思う。ただし、個人的には、捕鯨問題というよりも、映画そのものに気になる点があったのも正直なところ。この『おクジラさま』というタイトルは良くないと思う。「お」と「さま」の組み合わせでは、伝統や崇拝を連想させるし、それに対する言及や表現が作品中になかったのも気になった。そして、もうひとつは制作者の「中立」というスタンス。確かに捕鯨問題でYes/Noの立場を明確に世界に発信するのは、炎上のリスクが大きすぎるのかもしれない。でも、それゆえに論点がはっきりしない。真の表現には「中立」などないはずだ。そして、正論ほどつまらないものはない。「答えは観客にゆだねられる」と言えば聞こえは良いが、それも作者の思いがあってこそ。僕はそう思う。


書籍版も読んでみました。映画では表現されていなかった部分がフォローされているけれど、「バランス」を取るという姿勢がやっぱり歯がゆいです。

「鯨問題」は10個のQ&Aでおさまるとも思えないよ…。
鯨問題に関するよくある質問と答え:水産庁

『いまモリッシーを聴くということ』そして、2017年5月22日。

『いまモリッシーを聴くということ』をいま読むということ(笑)。The Smithsのアルバムがリリースされた80年代からソロ最新作を取り巻く現在まで、UKと世界情勢を背景にひもとかれるモリッシーのリリック。ワーキング・クラスの眼差しを失うことのない政治観、セクシャリティ、スミスの元メンバーとの確執、そして僕たち日本人がときおり見落としそうになる彼独特のユーモア。そんな〝モリッシーらしさ〟がイギリス暮らしの長い著者の言葉とひとつになって、音楽のように胸に届く。めちゃくちゃおもしろい!

いまモリッシーを聴くということ (ele-king books)

いまモリッシーを聴くということ (ele-king books)

僕はリアルタイムで聴きまくってた『Viva Hate』から読み始めた。そして、やっぱりジャケもイマイチな『Maladjusted』で切なくなったり…。クラッシュに『Cut The Crap』があるように、モリッシーにもあのアルバムがあるのだね。山あり谷あり。

Viva Hate: 2012 Remaster

Viva Hate: 2012 Remaster

で、『Strangeways, Here We Come』をひっぱり出して聴いてみたり。スミスとモリッシーがますます好きになれる一冊だと思います!表紙(キレイなモリッシーw)もステキ。

強いていえばひとつだけ。『The World Won’t Listen』も取り上げて欲しかったな。「Panic」や「ASK」、そして「Shoplifters Of The World Unite」という当時のスミスをさらに上に引き上げたシングルが収録されているこのコンピ盤もとても重要だと思うから。


そして追記。
すでに報道されているとおり、5月22日にアリアナ・グランデマンチェスター公演で(後日ISISが犯行声明を出した)自爆テロが起きた。この事件については世界中の人々、ミュージシャン、政府などから様々な意見や思いが伝えられているが、モリッシーも翌日に公式Facebookを通じてコメントを発表した。メディアや政府、そして僕たちでさえもが〝犯人探し〟や〝人道的にまっとう(だと思いがち)な意見〟に流されそうな中でも、〝People=私たち、一般人〟という言葉を使いながらイギリスの政治家や女王へ意見を表明している。めちゃくちゃ怒っている。5月22日はモリッシーの58歳の誕生日だった。


以下、モリッシーの公式Facebookからの翻訳です。

僕の誕生日をマンチェスターで祝ってもらっている時に、マンチェスター・アリーナでの爆発のニュースを聞いた。 怒りが刻みつけられた思いだ。これを止める理由なんてあるのか?


テリーザ・メイ(英国首相)はこんな事件にも「私たちは傷つけられない」というが、彼女自身の生活は防弾バブルに守られたものだ。そして彼女は明らかに、今日マンチェスターで犠牲になった若者たちの身元特定を急ぐ必要もないようだ。それに彼女が言った「私たちは傷つけられない」という言葉の意味は、その悲劇では「彼女自身と政府の移民政策が傷つけられることはない」ということだ。マンチェスターの若者たちはとっくにぶっ壊れているよ。ともかくありがとう、テリーザ。サディク・カーン(ロンドン市長)は「ロンドンはマンチェスターと共にある」と言っているが、彼はISを非難すらしていない。その爆弾事件について声明を発表しているのにも関わらずだ。女王は「力強いお言葉」でこの事件を非難したと馬鹿げた賞賛を博しておられますが、今日のバッキンガム宮殿での園遊会をキャンセルすることもないようで。このことについては、イギリスの報道の自由において批判すら認められていない。マンチェスター市長のアンディ・バーナムは「この攻撃は〝過激派〟によるものだ」と言っているが、何が過激なんだ? 過激なウサギちゃんか?


現代のイギリスでは、プライベートな発言をオフィシャルにすることに誰もが尻込みしているようだ。政治家たちは私たちに「テロリストを恐れることはない」と言うが、政治家たちは決して犠牲者にはならない。攻撃にさらされている場所から防御されている場合は、〝恐れずにいる〟ことも容易いだろう。我々一般人にはそんな防御などない。

モリッシー
2017年5月23日

ストーン・ローゼズ 日本武道館 2017.04.21.-22.

ストーン・ローゼズ 武道館2Daysに行ってきました。もともと僕は4月21日(金)の初日だけを観るつもりでいたのだけれど、その日のライヴを観たあとにどうしても次の日も観たくなって、会場で〝席の位置は保証できないけれど、割引するよ〟チケットを買ってしまいました。結果、これがナイスな判断だった。まさに「This Is The One」ってことで!

ずっと楽しみにしていたローゼズの単独公演。直前のイアン・マッカロクのドタキャン=「北朝鮮ヤバいから帰ります」騒動のあおりをくって、「ローゼズもちゃんと来るか微妙…」みたいな空気がSNSで流れ始めたり。そんな中、ライヴ数日前には「イアン・ブラウン到着のお知らせ」がこれまたツイッターで報告され始めてホッとしたのも束の間、今度は「ジョンも着いたらしいけど、まだレニとマニが来てないし…」ってね。みんな去年の〝レニ疑惑の骨折〟ドタキャン事件がだいぶトラウマになってるようで…。僕もそのひとりだけどね。


そんなふうにドキドキ、ハラハラさせられっぱなしの1週間。僕は仕事の休みを確保して、万全の態勢で挑むつもりだったのに、結局、直前のアレコレで出勤するはめに。猛ダッシュで仕事をこなしつつ、なんとか九段下に到着した時はもう開演時間の19時を少し過ぎていた。移動しながらツイッターを確認する。ちょっとくらい遅れても仕方ないな。ドタキャンしなかっただけでも良かったじゃないか。


武道館の1階スタンド席にすべり込むと、バンドは「Mersey Paradise」を演奏している最中だった。あとから知ったセットリストによると、4曲目には間に合ったことになる。ステージを確認すると、真っ白なヤンキー風ジャンパーでキメたイアンが目に入った。向かって右手にはスカジャンを着たジョン、左手にはマニ、そしてレモン印のツーバスの向こうには、ヒゲ面のレニもいる。これでホッとひと安心。22年ぶりの単独公演がようやく現実になったんだ!


そんな感慨に浸っている間もなくレニのカウントに合わせて、ジョンの軽やかなストロークが武道館いっぱいに鳴り響く。「(Song For My)Sugar Spun Sister」のイントロに、会場のみんなが歓声と手拍子でヴィヴィッドに反応する。その瞬間の光景を、僕はたぶん一生忘れないだろうな。深海のような淡いブルーのライトに照らされたアリーナの観客は、ふわふわと揺れながら音楽に身をまかせていた。ギュウギュウに押し合うわけでもなく、ステージを見つめたまま立ち尽くすわけでもない。それは『Blackpool Live』の1シーンみたいだった。憧れを抱きながら何度もDVDで観たそれは、「やっぱりイギリスだから」とか「あの時代だから」とか「いや、アシッドのおかげでしょ」とか、決して自分が体験することができないものだと思っていた。

「オーディエンスこそが主役」。そう言ったのは、ジョンだったっけ? イアンだったかな。どちらにせよ、ストーン・ローゼズのスピリットを端的に表すひとことだ。


1stアルバムの完璧さにリアルタイムでノック・アウトされながらも、ようやく観ることができた12年のフジロックでイアンのタンバリンをキャッチ(!)しながらも、その言葉が意味するものを本当に〝体験〟できたとは思えなかったことがずっと心残りだった。ぐずぐずだったソニックマニアのあとでは、「オーディエンスこそが主役」だなんて、そんなものは単なるスローガンで、ナイーヴな理想主義でしかないのかも。そう思ったことすらあった。


でも、今回の武道館は違った。アリーナのみんな、そしてスタンド席のみんなが笑顔でゆらゆら揺れながら歌い、手拍子を重ね、声援を上げていた。スネアの一発だけで会場を支配できるレニのドラム、派手さはないけれどしっかりとボトムを固めるマニのベース、ヘヴィに唸りを上げる豪快さと泣きたくなるほどの優しさが共存するジョンのギター、そして相変わらず調子っぱずれなのに我が道を行くイアンの歌声。つんのめる。ずれる。はずす。そんな彼らの演奏を補完して、名曲たちを完成させる最後のピースが〝オーディエンス〟つまり〝ここにいるみんな〟だということ。「Bye Bye Badman」から「Shoot You Down」へと続く、甘美なメロディと強靭なグルーヴの波の中で僕はようやくその意味を身をもって知り、実感することができた。会場全体からあふれ出す不思議なグルーヴを全身で感じた。


相変わらず1stアルバムを中心にしたセットリストだったけれども、いくつかの発見と驚きもあった。あの「Begging You」の狂ったようなイントロが鳴り響いた瞬間は、まさに全身鳥肌! レニのドラムがグイグイ引っ張りながらも、ジョンのワウがしっかりグルーヴィにタイトに決める。まったく古びていないどころか、最新のフロアでもしっかり響くサウンドだと思う。中盤、「Waterfall」をプレイする前にレニがあの〝レニハット〟を取り出してかぶった時は気合いがビシビシ伝わってきたよ!


そして、フジロックでもソニックマニアでもやらなかった「Elizabeth My Dear」もきっちりやるんだ〜って、しみじみしたりね。この曲の音源では最後のほうに「ピュン!」って音が入ってる。僕はそれがずっと気になってた。アコギに指がこすれる音にしてはハッキリしすぎているし…。エリザベス(女王様)を撃つサイレンサー付きの銃の音だとしたら物騒だな、とかね。で、今回のライヴではなんと! その〝音〟までがしっかり再現されていた。しかもイアンの声で(笑)。最後のフレーズ〝It’s Curtains For You, Elizabeth My Dear〟のあとで…「ピュン!」って、イアンが言ってた。つまり、あの音は録音上のノイズではなくて意図的に残したものだということ。やっぱりサイレンサーなのかな?


2日間とも完璧にみんなの大合唱がはまった(最高)「Made Of Stone」、2日間とも完璧にイアンが音程を外した(笑)「She Bangs The Drums」というローゼズしかありえない〝完璧〟な流れからのラスト、「This Is The One」と「I Am The Resurrection」では、よりいっそう大きく鳴り響く手拍子と歓声と大合唱が本当に感動的だった!

「オーディエンスが主役」。時代が変わっても、ここ日本でも、その言葉の本質を音楽で示してくれたストーン・ローゼズ。次はニュー・アルバムでもそれを証明して欲しいな。


…こうして、僕は2日目のチケットを買いに走ったワケでごさいます。えっと、次の日もまったく同じセトリでした。ブルース・リー、モハメッド・アリのモーションを完全に昇華して、もはやドリフかパタリロにしか見えないイアンのダンスも同じ…(笑)。つまり最高だったってこと。開演前にSEでフラワード・アップ「Weekender」やカメレオンズ「Swamp Thing」が流れていたんで、もう最初っから最後までめちゃくちゃ楽しかったです。 以上!


〈SETLIST 2017.04.21/22〉
1. I Wanna Be Adored
2. Elephant Stone
3. Sally Cinnamon
4. Mersey Paradise
5. (Song for My) Sugar Spun Sister
6. Bye Bye Badman
7. Shoot You Down
8. Begging You
9. Waterfall
10. Don't Stop
11. Elizabeth My Dear
12. Fools Gold
13. All for One
14. Love Spreads
15. Made of Stone
16. She Bangs the Drums
17. Breaking Into Heaven
18. This Is the One
19. I Am the Resurrection


〈おまけ〉
これがフラワード・アップの「Weekender」だ! 大好きなバンドだったよ。

『沈黙 —サイレンスー』


マーティン・スコセッシ監督の『沈黙 —サイレンスー』を観た!
キリスト教がストーリーの軸であることは原作と同じだけど、所謂〝神〟や〝宗教〟よりも〝信じること〟そのものがテーマなのかな。それは「何を?」でも「なぜ?」でもなく、「善悪」ですらない。結局は自分でも計り知れない「どれくらい?」という問いかけ。
弱さのカタマリのようなキチジローが、最後に彼なりの「これくらい」を見せるところが良かった。
卑怯者は、時には自分に対する正直者でもある。僕には身に覚えがあることだ。

沈黙 (新潮文庫)

沈黙 (新潮文庫)

ちなみに『沈黙』には場面を盛り上げるようなBGMがほとんどなくて、印象に残るのは虫の音や波の音。なのにエンド・クレジットの〝音楽エグゼクティブ・プロデュース〟にロビー・ロバートソンの名前が! いちばんびっくりした(ºωº)

My Best 10 Movies Of 2016

君の名は。』とか『シン・ゴジラ』とか。普段はあまり邦画を観ない僕でさえも映画館へ足を運ばずにはいられないほど、日本の映画が注目を集めた1年だった気がします。でも、その2本はそんなに良かったかな? 2016年の邦画でいちばんおもしろかったのは、実はアレでしょ? とかね!では、僕の2016年ベスト10ムーヴィーズの発表です!


10位 『スーサイド・スクワッド』(監督:デヴィッド・エアー観たあとは「あ〜、すっきりした! めちゃくちゃおもろい!」と思ったはずなのですが、各地でハーレイ・クインちゃんが多数出現したといわれているハロウィーン後はすっかり記憶がおぼろげです。ごめんなさい。ジャレッド・レト演じるジョーカーのこれからに期待!(でも、ほどほどにね…)


9位 『ヘイル、シーザー!』(監督:コーエン兄弟伊達男ジョージ・クルーニーがひっぱたかれるシーンは必見!ジョシュ・ブローリン、スカヨハ、ジョナ・ヒルなどなどキャストも素敵なコーエン兄弟によるハリウッド賛歌。でもね、コーエン兄弟には今こそ「時代/現代」と響き合う映画を作って欲しいのです。次はもっとやってくれるはず!


8位 『シン・ゴジラ』(監督:庵野秀明樋口真嗣ちりばめられたオマージュ、「あぁっ!」っと言わせるゴジラの造形はお見事。でもね、政府主体のストーリー展開が僕にはかなり退屈だった。いったんシラけてしまうと、やたら豪華な(だけな)キャストの演技がキツい。『ゴジラ』という「映画」そのものへのオマージュなのか、『ゴジラ』という「映画」が本来持っていた「意図」を汲んだ作品なのか。そのバランスが前者に傾いていたのが、少し残念でした。DVDでもう1回観たら印象変わるかな?


7位 『グッバイ、サマー』(監督:ミシェル・ゴンドリー新宿シネマカリテでは満席で観ることができなかった。本当にサマーがグッバイした11月にようやく地元の映画館で観ることができました(そのときは観客5名…)。ポンコツだけどクールなオブジェ、手書きイラスト、そして相変わらずセンスのいい音楽(ゲンズブールとの共作で知られるジャン=クロード・ヴァニエ!)が描き出す、甘くてしょっぱい少年時代。主人公のダニエルがサムライ・カットになるシーンは最高! もう少し「毒っけ」があったらよかったのに。ってのは、欲張りかな。


6位 『オデッセイ』(監督:リドリー・スコットリドリー・スコットやっぱ最高! 一人芝居でも再現できそうな密室劇の舞台は火星。シリアスに、頭でっかちになりがちな「宇宙科学映画」だけれども、ユーモアを文字通り「勇気」に変えて生き延びるストーリーにぐいぐい引き込まれました。マット・デイモンがはまってる! そして「スターマン」に涙。『オデッセイ(Odyssey=長い旅)』という邦題は、『2001年宇宙の旅』のイメージが強すぎてイマイチだと思うけどね。


5位 『ローグ・ワン/スター・ウォーズ・ストーリー』(監督:ギャレス・エドワーズ「冬休みのお楽しみ〜♪」的な軽い気持ちで観に行って号泣! スター・ウォーズ・シリーズで泣いたのは初めて。『エピソード4/新たなる希望』につながる単なるスピンオフとあなどるなかれ。「はみ出し者」たちの栄光なのだ。メイン・ストーリーを見返すときに深みが増すこと間違いなし!僕はフォレスト・ウィテカーの瞳にグッときました。


4位 『この世界の片隅に』(監督:片渕須直映画という「作り物」ではなく、本当の「痛み」を感じた。僕が中学生になった頃に祖母と祖父が語ってくれた戦争の話を思い出した。戦地へ赴いた若き日の祖父、祖父の帰りを待っていた祖母。それぞれの日々と、僕がその話を聞いた夏休みのあの日の暑さが重なり合った。そして、この映画も。「大傑作!」と大声ですすめはしない。誰かにとっては、大きな傷になってしまう作品かもしれないから。向き合えるときに、向き合えばいい。歴史の中で、決してかき消されることのない日本の記憶。


3位 『TOO YOUNG TO DIE! 若くして死ぬ』(監督:宮藤官九郎「マザ・ファッカ〜!!」クドカンの熱烈なファンではないけれど(むしろ微妙…)、この映画はめちゃくちゃおもしろかった! 『エレファント』(ガス・ヴァン・サント)や『桐島、部活やめるってよ』(吉田大八)みたいな時間軸ループ方式の「生」と、グダグダな「死=地獄」の対比が素敵。そして、音楽ネタもやりすぎ手前の寸止め感が絶妙。「死」を笑うことで、「活き活き」しちゃってるのが何よりも良かった! 「この恨みハラスメント!」ってことで、じゅんこ最高! (DVD買いました。)


2位 『シング・ストリート 未来へのうた』(監督:ジョン・カーニー)アイルランド、ダブリンを舞台としたバンド小僧の成長物語。主人公の年齢も、バンドを始めた年頃も僕と同じくらいかもしれない。感情移入しすぎて、細かいストーリーはうろ覚えですが…アニキが放ったひとこと「大丈夫だ。フィル・コリンズを聴いてるヤツは女にモテない」は名言でございます。キュアーを聴いて人生を知る。それは(一部の)男子にとって、とても大事なことなのです。ダブリンなんだから、ブームタウン・ラッツへのひとことも欲しかった!


1位 『レヴェナント:蘇りし者』(監督:アレハンドロ・ゴンザレス・イニャリトゥ僕なら何回も死んでるな! ってくらいひどい目に遭わされるレオ様。めちゃくちゃがんばってます。以前、このブログにも書いたけれど、生と死の境目が曖昧になる感覚はイニャリトゥ監督の前作『バードマン』にも通じるものがある。わかったフリをさせる教訓も、目の覚めるようなカタルシスも、ここにはない。圧倒的な映像と音楽、そしてシンプルゆえに様々な解釈ができそうなストーリーだけがある。坂本龍一、アルヴァ・ノト、ブライス・デスナー(The National)によるサントラも最高でした!


というワケで、こんな感じでございます。
2016年、映画館で観ることができた作品は20本くらい。めちゃくちゃ楽しみにしていたのに見逃した作品も数知れず。『ハドソン川の奇跡』(時間がなかった)、『PK』(満席だった)、『ザ・ビートルズ EIGHT DAYS A WEEK』(忘れていた)、『ヘイトフル・エイト』(終わっていた)、『ジュリエッタ』(時間がなかった)、『JUNUN』(どこでやってた?)、『追憶の森』(観る気が失せた)、『ブラー ニュー・ワールドタワーズ』(DVDを買う)などなど。
君の名は。』はね、歌が大キライなので、圏外ってことで。2017年はもっとたくさん観に行かなくちゃ。「時間がない」は人生を損する言い訳でしかないからね。

『シング・ストリート』で主人公コナーくんのアニキが大プッシュするキュアーですよ。
今年もよろしくお願いしまーす!